■注意喚起および勧告内容
2022年3月1日、シンガポールHSA (Health Science Authority) が医薬品成分 (デキサメタゾンなど) を含む2製品 に注意喚起。当該製品との因果関係が疑われる健康被害が2件報告されている。
Traditional Herbs Preparation XPE | クロラムフェニコール クロルフェニラミン デキサメタゾン イブプロフェン ロバスタチン テトラサイクリン |
FS++ Slimming Supplements By JPJ Slim | シブトラミン |
■解説
ウェブサイトやソーシャルメディアを通じて販売されていた当該製品との関連が疑われる健康被害の報告を受け、シンガポールHSAが検査したところ、医薬品成分が検出された。
・60代女性が、関節痛をやわらげる目的で、友人がマレーシアで入手した「Traditional Herbs Preparation XPE」を9ヶ月以上摂取したところ、すぐに関節痛が緩和されたが、摂取中止または摂取量の減量によって再燃した。
・1名 (性、年齢不明) が、痩身効果をうたってソーシャルメディアで販売されていた「FS++ Slimming Supplements By JPJ Slim」を摂取したところ、不眠、頭痛、精神の混乱を生じた。
シンガポールHSAは、消費者に対し、「FS++ Slimming Supplements By JPJ Slim」を使用している場合はすぐに使用を中止するように、また、ステロイドを含む「Traditional Herbs Preparation XPE」を使用している場合は、離脱症状を防ぐため自己判断で中止せず医療機関を受診するように勧告し、大げさに有効性をうたう健康製品を使用しないよう注意を促している。
■関連成分
クロルフェニラミン (chlorpheniramine) 、フェニラミン (pheniramine)
抗ヒスタミン薬として、アレルギー性疾患 (蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎など) に使用されている。眠気を伴うことが多く、注意力の低下などの副作用が見られる。緑内障や下部尿路の閉塞性疾患(前立腺肥大など)の方は症状が悪化するため禁忌。また、小児では興奮症状 (過剰運動、不眠、痙攣発作など) が見られることもある。
デキサメタゾン (dexamethasone)
抗炎症作用が強く、作用の持続時間もステロイドの中で最も長い薬物。抗炎症や免疫抑制に使用されるが、糖尿病やムーンフェースなどの副作用が起こる可能性がある。連用後、急に服用を中止すると重篤な離脱作用が起こることがあり、連用後の服用中止時には、徐々に減量するなど注意が必要な医薬品。
ロバスタチン (lovastatin)
米国では承認されている高コレステロール血症治療薬であるが、日本国内では未承認。副作用として、筋肉痛や圧痛、虚弱などを伴うミオパチーがあげられ、高度な症状として、急性腎不全につながる横紋筋融解症が報告される。高用量のロバスタチン摂取、ほかの脂質異常症治療薬等との併用により副作用が発生しやすく、またロバスタチンはCYP3A4基質であるため、強力なCYP3A4阻害剤やグレープフルーツジュースとの併用により副作用発症のリスクが増大する。
シブトラミン (sibutramine)
シブトラミンは、1997年に肥満抑制薬としてアメリカFDAの許可を受けたが、日本では未承認。副作用として血圧上昇および心拍数増加などが報告され、心臓病の方は服用を避けたほうがよいとされている。アメリカ国内ではFDAの許可後、2003年8月までに54例の死亡事例 (うち30例は心血管が原因) が報告された。2005年8月、FDAはシブトラミンの使用停止に関する消費者団体の請願書に対し、シブトラミンの使用に細心の注意を呼びかけ、その安全性を監視することにより、引き続き医薬品として承認していくことを公表した。しかし、心血管疾患歴のある患者では心血管疾患再発リスクが高くなるという欧州で実施されたSCOUT試験 (Sibutramine Cardiovascular OUTcome Trial) の結果をうけ、2010年10月、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでメーカーによる任意回収が決定。開発したメーカーはすでに販売・流通を中止している。2010年11月、インド医薬品規制当局 (Drugs Controller General of India、DCGI) も販売を禁止した。
■関連情報
シンガポールHSAウェブページ (2022年3月1日、英語) →「HSA Alert:Two Consumers Experienced Adverse Effects After Taking Products with Potent Undeclared Ingredients」
外国製健康食品の入手や個人輸入等についての注意事項等→「健康食品や医薬品、化粧品、医療機器等を海外から購入しようとされる方へ (厚生労働省作成2012年版) 」