ナイアシン解説

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A.ナイアシンとは?
 ヌクレオチド (NAD) やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 (NADP) に変換され、酸化還元反応 (電子が供与体分子から受容体分子に転移する反応) に関与する酵素の補酵素として機能しています。また、NADが基質として利用されるADP−リボシル化反応にも関与しています。ナイアシンは食品からの摂取以外に、生体内で必須アミノ酸のトリプトファンから生合成することができ、食品から摂取したトリプトファンの1/60がナイアシンに転換されるといわれています。不足すると、皮膚炎・下痢・精神神経障害を主症状とするペラグラを引き起こすおそれがあります (12) 。

B.ナイアシンの供給源になる食品
 主な食品のナイアシン含有量 (ニコチン酸相当量) は以下の通りです (5) 。(可食部100 gあたり)



C.ナイアシンの特性 (単位・化学的安定性)
 ナイアシンは水溶性のビタミンで、中性、酸性、アルカリ性、酸素、光、熱に対して安定です。そのため、保存や調理によって効力が低下することはほとんどありません (9) (13) 。しかし、ニコチン酸やニコチンアミドは水、特に熱水には極めて溶けやすいため、煮物料理をすると煮汁中に70%も移行します。また、肉類をから揚げにすると、20〜40%程度のニコチンアミドが油中に移行します (12) 。

D.ナイアシンの吸収や働き
 ナイアシンは、動物性食品中ではニコチンアミド、植物性食品中ではニコチン酸として存在し、ニコチンアミド、ニコチン酸のいずれも小腸で速やかに吸収されます (3) (12) 。生理的濃度では小腸でのナイアシン吸収はpH依存的な促進拡散ですが、高濃度では受動拡散が主となります (3) 。ニコチンアミドは肝臓以外の組織に運ばれ、余ったものが肝臓に取り込まれます。他方、ニコチン酸は肝臓に取り込まれた後、ニコチンアミドに変換され、各組織に放出されます。肝臓ではトリプトファンからニコチンアミドを合成することができます。ヒトではニコチン酸やニコチンアミドではなく、MNA (N1-メチルニコチンアミド) や2-Py (N1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド) 、4-Py (N1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド) に代謝されて尿中に排泄されます (12) 。ナイアシンの体内代謝は以下の図の通りです。

NAD+:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド, NADH:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド,
NADP+:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸, NADPH:還元型ニコチンアミドアデニンジ
ヌクレオチドリン酸, NMN:ニコチンアミドモノヌクレオチド,MNA:N1-メチルニコチンアミド,
2-Py:N1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド,4-Py:N1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド


E.ナイアシン不足の問題
ナイアシン不足はどのような人に多く見られるの? (3) (12) (19)
1.とうもろこしを主食としている人 (とうもろこしのトリプトファン含有量が低いため)
2.ビタミンB6が欠乏している人
3.イソアニジド (抗結核剤) を使用している人
4.ハートナップ病・トリプトファン尿症・キサンツレン症候群などの代謝異常

ナイアシンが不足すると、どのような症状が起こるの?
 ナイアシン不足の重篤な疾患としてペラグラがあります。ペラグラの主症状は、皮膚炎・下痢・精神神経障害であり、治療しないと死に至ります。ペラグラ患者は日本ではまれですが、アルコール依存症患者の中に、たんぱく質や他のビタミン不足とともに、ナイアシン不足が見られることもあります (3) (12) 。

F.ナイアシン過剰摂取のリスク
 ニコチン酸を過剰摂取すると、一時的に顔の紅潮や、掻痒感 (むずがゆくなること) などの「フラッシング (flushing) 症状」が起こることがあります (12) 。また、ニコチンアミドの過剰摂取では、胃腸障害、肝毒性、消化性潰瘍の悪化などの副作用が知られており、日本人の食事摂取基準でも耐容上限量が設けられています (1) 。

G.ナイアシンはどのぐらい摂取すればよいの?
 各年齢別のナイアシンの食事摂取基準 (日本人の食事摂取基準2015年版) は以下の通りです (1) 。



H.ナイアシン摂取状況
 平成29年の国民健康・栄養調査で男性は平均15.7 mg/日、女性は平均13.1 mg/日摂取しており、男女ともほぼ推奨量を充たしているといえます(17)。

I.栄養機能食品としての関連情報
 ナイアシンは、栄養機能食品として表示許可されています。
・上限値は60 mg 下限値は3.9 mgです。
・ナイアシンの栄養機能表示
「ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」
・注意喚起
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」

 栄養機能食品の表示に関する基準の詳細についてはこちらの資料をご参照ください。

J.その他の情報
ナイアシンは以下の症状の治療薬として用いられます (18) 。
1.ニコチン酸欠乏症の予防及び治療 (ペラグラ等)
2.ニコチン酸の需要が増大し、食事からの摂取が十分な際の補給 (消耗性疾患、妊産婦、授乳婦、激しい肉体労働時等)
3.次の疾患のうちニコチン酸の欠乏または代謝障害が関与すると推定される場合。
・口角炎、口内炎、舌炎
・接触性皮膚炎、急・慢性湿疹、光線過敏性皮膚炎
・メニエール症候群
・末梢循環障害 (レイノー病、四肢冷感、凍瘡、凍傷)
・耳鳴り、難聴
・SMON (スモン、亜急性脊髄視神経症) によるしびれ感



参考文献

(1) 日本人の食事摂取基準 2015年版:第一出版
(2) 栄養学総論:三共出版株式会社
(3) 専門領域の最新情報 最新栄養学:建帛社
(4) FOOD CHEMISTRY THIRD  EDITION:Owen R.Fennema
(5) 日本食品標準成分表2015年版 (七訂)
(6) 消化・吸収:第一出版
(7) DIETARY REFERENCE INTAKE forThiamin,Riboflavin,Niacin,VitaminB6,Folate,VitaminB12,Pantothenic Acid,Biotin,and Choline: National Academy Press
(8) 薬理書:廣川書店
(9) 健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック:第一出版
(10) Q&A 保健機能食品制度の手引き:新日本法規
(11) ビタミン研究のブレークスルー:日本ビタミン学会編
(12) ビタミンの辞典:朝倉書店
(13) 日本薬局方解説書:廣川書店
(14) ビタミン学会ホームページ
(15) 厚生労働省ホームページ
(16) 健康ネット
(17) 平成29年 国民健康・栄養調査報告
(18) 治療薬マニュアル 2016:医学書院
(19) ハーパー生化学 原書25版:丸善株式会社

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